●2013年6月27日
■ 前回から検討している「品質記録の役割とその有効性」
当社では従来、業務プロセスの運用に関わった書類・記録は、全て「品質
記録」として認識し、保管管理していた。
しかし本当に保管管理を要する「品質記録」なのか…という問題に当たっ
た。
ISO規格要求事項まで立ち戻って、見えた結論が「手順が確立した上で、
前工程の効果的な運用で次工程の有効的な運用に移った時、前工程の品質
記録は役割を終え、また保管管理の必要は無い」。
即ち、当社は「品質記録」の認識が浅かったために、過剰に記録を保管管
理していた。…この発見は凄い改善だ!
■ この議論の発端である「打合せで使用した前回成績書を、今回JOBが完
遂した後も品質記録として保管管理している」という問題はこれで解決!
記録の管理も幾分スッキリした…と思った矢先、別の疑問にぶつかった。
それは「前回成績書を保管しないことで、もし当該JOBの校正スペック
がこう決まった根拠を求められても示せるのだろうか…?」
これは内部監査でもよく指摘に挙がったことでもあり、そのために「前回
成績書」を品質記録として管理していたのだが、上記のような結論に達し
た今、校正スペックの根拠をどう証明するか…
当社ではお客様の機器を初めて校正する際、安全・確実な校正スペックを
決めるために『個別校正仕様書』(例図参照)を用いて打ち合わせる。
謂わばこの『個別校正仕様書』が校正スペックの根拠になるのだが、この
記録の保管管理は3年間。
例図 個別校正仕様書
3年間保管した後は廃棄していたが、今後はずっと残さなければならない
のだろうか…そういえば、そういうことを内部監査でも謂われた。
■ この疑問をQMSミーティングで挙げてみた。
するとトップはこう説いてくれた。
「確かに『個別校正仕様書』は最初にスペックを決めた根拠となる
記録。
しかしそれが翌年には「前回成績書」というカタチになり、今回
JOBの校正スペックを打合せ、それを基に校正をし、成績書を
お渡しする。
使われる書類が何であろうと、お客様が今回要求される校正業
務を提供し、完遂させる。ビジネスとはそういうものじゃないか。
初めて校正する機器については、要求スペックを事細かく聞かな
ければならない。それは品質記録であり、保管管理しなけれなら
ない。その情報が違うカタチで受け継がれ、代々続いていくのだ
から、『個別校正仕様書』をずっと持っておくことは意味が無く、
3年間の管理でも十分。」
■ トップの言葉に得心がいったし、安心した。
内心、この疑問の結論によっては、新たな「記録の管理」が必要になるの
ではないかと冷や冷やしていたが、トップが考えるビジネスの基本から説
いて貰ったおかげで納得出来たし、何よりホッとした。
私はQMS推進者として記録の重要性を分かっていたつもりだった。
しかし今回「前回成績書」という1つの書類から、品質記録の本質や役割、
その有効性のみならず、「ビジネスの基本」まで学ばせて貰った、とても
とても深いテーマだった。
たかが「記録」…されど「記録」